◎心の葛藤

・恨んでも復讐だけはしないほうがいい

子供時代から思春期を家族からの暴力や虐待の中で生き、その後約30年間後遺症やフラッシュバックに苦しみました。それでも、環境の変化や大人になってから出会った人たちや出来事を通じてなんとか人間らしい生き方ができるようになってきた私から、今まだ苦しむ人に伝えたいことの一つに『どんなに恨んでも復習だけはしないでほしい』ということがあります。

私も、暴力や虐待を受けている間、そしてフラッシュバックに苦しんだり、虐待の記憶や、痛み続ける体や頭の痛みに耐える日々の中で何度も、加害者である兄に対する復讐を考えたり、実際に企てたりしました。兄さえいなくなれば心から安堵して暮らせると思い、完全犯罪でやろうと考えました。今となれば、そんなことできるわけないことは分かりますが、当時まだ高校生や大学生だった私は未熟でした。できると思ったのです。

初めて復讐を試みたのは、私が高校1年生の時です。兄は高校を卒業してから静岡の実家を離れ埼玉にキャンパスのある大学に進みましたが、年に何度も帰省してきました。その時期は私も高校生になっており家で兄と二人にならないように気を付けていました。兄は実家に帰ってくるとまず、しばらく寝るのです。以前私は学校で、人はオオスズメバチに2回刺されるとアナフィラキシーショックで死ぬと学んだのを思い出し、兄の帰省にあわせてスズメバチを2匹捕獲しました。そのハチを兄が帰ってきたら兄がシャワーを浴びている間に布団に入れ兄が寝るのを待ちました。・・・そして2時間ほどたち、兄は何の異変もなく起きて地元の友達と遊びに出かけました。私は「なぜ?ハチは刺さなかったのか?」と思い兄の寝ていた布団をめくってみました。ハチは布団の繊維に絡まったのか、布団の隅の方で息絶えていました。

1度目の復讐で失敗した私は、2度目は確実にと思い、更にいろいろしらべました。結局これも失敗に終わったのですが次のようなものです。

私が高校2年生の時、兄は大学2年生になりました。兄は交通事故を起こし、30針以上縫うけがや骨折をしました。急な事故で両親が埼玉に呼ばれ、私も連れていかれました。入院中の兄の部屋に母と泊まりました。『水道に、ある薬品を仕込めみ、それを口にしたら障害を起こす』ということを過去にテレビでみたことがあり、兄の一人暮らしの部屋の水道の分解方法を調べ、次に来た時に実行しようと計画をたてました。兄は事故のけがで足に入れたボルトを1年後に抜く手術をする予定があったので、私もその時に親についてきて入院中の兄の部屋に滞在し自分が帰るときに水道に細工する予定でした。でも、1年後私は受験生だったため、親に付いて来て、入院中の兄の部屋に潜入することができませんでした。そのまた1年後、私は実家から遠く離れた岡山の大学に進学をしました。そして、大学の友達と東京方面に遊びに行く言う名目で兄の部屋に泊まりに行きました。また殴られるかもしれないという不安はありましたが、復讐のためなら…、という気持ちで行きました。しかし、兄は私が計画を立てている2年の間に引っ越しをしており、水道の形態も変わっていて私が綿密に計画を立てて準備していた工具も使えず、もちろん薬品は仕込むことが出来ず、2年かけた私の復讐計画も未遂に終わりました。

その時私は、復讐自体が悪いことだったというよりむしろ、計画が実行できず未遂に終わってしまったことに対して相当落ち込みました。当たり前ですが、復讐を考えて生きてきた数年間は無駄でしかなかったのです。復讐のためにいろいろなことを準備する間、嫌でも頭の中は復讐をする相手のことでいっぱいになります。何もしなくても、暴力や虐待の記憶で苦しみ、フラッシュバックで眠れない日も多いのに、復讐を企てることは自分自身で暴力や虐待を思い出す時間を作り出してしまっているということになります。その時間をもっと自分が幸せになることに使えばよかったと後で後悔しました。おいしいものを食べたり、心を落ち着けるための体操でもしたり。

きっと今苦しい方々の中には、自分を苦しめた相手を同じように苦しめたいと思い、仕返しや復讐を考えている人もいるでしょう。でも、やめましょう。復讐しようとすればするほど、結局は自分を苦しめてしまいます。自分も相手と同じ種類の人間に成り下がってしまうかもしれません。一番いいのは相手から距離を置き、無関心になることです。そして、相手の存在に惑わされない、不安にならない自分を作ることです。もうこれ以上自分を苦しめないように。

・恨んでも復讐だけはしないほうがいい はコメントを受け付けていません

今の時代、多くの人がストレスを抱えて生きていると思います。 私も成長期の家族からの暴力や虐待に30年以上たった今でもトラウマを残し、生きづらさを抱えて生きてきました。 でも、人はみんな幸せに生きる権利があります。今の人生がつらい過去の上にあるとしても、そして、自分を取り巻く状況が厳しいものであっても、人の心や幸せの意味を考えてみんなに幸せになってもらいたいと思います。 いろいろあっても、工夫して、自分を癒し、人を癒し、明るい未来に向かいたいです。